…めっちゃ難しいですよね。
出来るものならリラックスして歌いたい。
でも、いざ歌いだせば喉も舌も顎もガッチガチ…。あっという間に声はガッラガラ…。
そこで今日は、この苦行の抜け道にも一役買ってくれる「筋肉のとある特性」の話をしてみようと思います。
人間の体ってほんと面白い。
筋肉の主な特性
出来るのは「収縮する(固める)こと」だけ
筋肉には
「さぁ!ギュッっと縮んで大きなパワーを生み出せー!」という命令は受け付けるが、
「さぁ!だら~んと緩んでガチガチになるのをやめろー!」という命令は受け付けない。
という、ちょっと変わった特性があります。
つまり、僕たちが筋肉に意識的に送れるのは「筋肉よ!緊張しろー!!!」って命令だけなんですよね。The 猪突猛進!

いいえ、そんなことはありません。
たとえば「時間経過」。
声を出さずに別作業をしていると、脳からの「筋肉を固めろー!」って信号はどんどん減少していくので、少しずつ硬直状態は解除されていくのです。
…ただ、これだとちょっと効率悪いですよね。
緊張が引くまで休ませてる間は何も歌えないし、頑張って連続して歌おうとすれば喉が逝く。
こんな地獄の二択から早く抜け出したいので、次は効果的に緩める方法の話に移ります。
筋肉を緩める2つの方法
外部から筋肉を伸ばす「マッサージ」
緩める方法=マッサージ、と連想する人は多いと思います!僕もすぐコネコネしたがります!
マッサージには、
「外部からの力で筋肉の硬直&結束をすこしだけ緩ませ、せき止められていた血流が良くなる → 疲労回復が早くなる」
という効果があります。
血流が良くなると、筋肉を動かしたり治したりする為の栄養素(酸素や酵素など)が血と一緒に運ばれ、筋肉のパフォーマンスが本来の状態に戻りやすくなるんですよね。
ただ注意点もあって、
マッサージした直後、緊張した時と同じ動きを繰り返してしまえば、あっという間にガチガチの状態に戻ってしまうのです…。
つまり、マッサージの主な役割は
「使用した筋肉を休ませる際に、効率的に回復させるための事後処置」
だということ。
だからこそ、根本的な筋肉の使い方が変わらなければ、
「筋肉が回復する量 < 筋肉が疲労する量」
というバランスは変わらないので、マッサージだけで「歌ってる最中のリラックス状態を手に入れる」というのはかなり難しいのです;
※上記の他に、外部からの刺激による神経開発を目的とした「リハビリ」としてのマッサージも存在します。
ただこちらは、重度の運動不足・マヒなど「著しく落ちてしまった運動機能を一定ラインまで回復させること」を目的としている為の施術なので、極一部の人以外はかなり効果は薄めです。
内部のバランスを書き換える「相反性抑制」
上でも書いたように、筋肉は「固くさせる(収縮させる)」という命令は受け付けても、「弛緩させる(リラックスさせる)」という命令はなかなか受け付けてくれません。
そこで活躍してくれるのが、相反性抑制という筋肉(達)の特性。
どんな動きか「腕」を例に説明してみます。
Aは腕を曲げるときに、
Bは腕を伸ばすときに主に働く筋肉です。
例えば、腕を曲げながら重いダンベルを何度も何度も持ち上げたとします。
すると、次第にAの筋肉は疲労し、ゴワゴワと固くなったり痛みを伴うようになります。
これは、喉がガチガチになった時と同じ状態です。
「ひたすら筋肉に信号を送り続けたせいで、筋肉が硬直しすぎて解けなくなってしまった状態」なんですよね。
そこで活躍してくれるのが、Aと相対(反対に位置)するBの筋肉。
Aを緩めたくても、
「Aの筋肉よ!リラックスしてくれ!」
という信号は届かないのですが、
「Bを活動させて、Aが勝手に伸びちゃう(緩んじゃう)状態にしよう」
という命令を使うと、すぐにAの筋肉が緩みだすんです。
腕の場合であれば
- 硬直が強く、腕を曲げたまま戻せない時は、手の甲~ひじまでを壁に当て、数秒間壁を押し返す。いけるなら何セットかやる。
- 腕を下げれるなら、背中を壁に付け、手の甲~ひじまでで壁を押し返す。これも数秒間×何セットか。
これらの「曲げる」とは逆の「押し返す動き」を司る筋肉を使っていくことで、Aの筋肉が緩んでいきます。
更に、この相反システムをボイトレのメニューに組み込んでくと、
- 特定の筋肉にストッパーをかけたまま、発声練習することができる
- 緊張しやすい筋肉=普段の発声で頼ってる筋肉でもあるので、普段やってる発声そのものが不安的になる
- 不安定なので、これまで使ってこなかった他の筋肉達を頼らざる得なくなる
- これまでの発声の固定概念が崩れて、効率のよい新しい発声を見つけ出しやすくなる
こんな過程&メリットに出会えるんです。

……それを、筋肉と知識を使い、実感と俯瞰を行き来しながら解決していくスタイル!
ボイトレも「思い込みが難しくしてること」がいっぱい
ガチガチに緊張してる部分=悪いパーツ(筋肉)ってわけじゃ無いんですよね。
一応彼らも、今までの発声をなんとか保とうと頑張ってきてくれた陰の功労者くん?さん?なんですし。
あと、固くなってる部分の緊張を完全に解いても、すぐ楽な発声が手に入るわけじゃありません。
最初は今までとは勝手が違いすぎて、どう声を出してけばいいのか、手も足も出なくなります(喉だけど)
緊張部分をすこしだけ緩めることが出来れば、これまでの出し方のままでも、少しだけ喉のスタミナが伸びることもあります。ただ、もちろん歌い続ければしっかりダメージは溜まります。
そして、上で紹介したような「緊張部分を使えない環境でのボイトレ」をしていけば、緊張部分を使わない発声=負担の少ない声の出し方を探し出すこともできます。
もちろん。歌や発声に正解なんてものは無いので自分が好きなものを選んで良いと思います。
ただ、「新しい体験をしたいのに足止め喰らってる…」って時は知識と実感(経験)が思い込みを外し易くしてくれるよ。って話でした。
筋肉ってホントふしぎで偉大だね。ぱわぁぁぁぁあああああ
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